サイバーセキュリティのイメージ — ノートPCに流れるデータ
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「うちは小さい会社だから狙われない」──その思い込みが最大のリスクです

結論から言います。 中小企業こそサイバー攻撃の標的になりやすく、しかも被害が深刻化しやすいのが現実です。

IPA(情報処理推進機構)の「情報セキュリティ10大脅威 2026」によると、ランサムウェア被害やサプライチェーン攻撃は年々増加しており、大企業の取引先である中小企業が「踏み台」として狙われるケースが急増しています。大企業は厳重なセキュリティ対策をしているからこそ、防御が手薄な取引先を経由して侵入するという手口が主流になっているのです。

しかし「セキュリティ対策」と聞くと、専任のIT部門が必要で、年間数百万円のコストがかかるイメージを持つ方も多いかもしれません。実は、3つのカテゴリのツールを導入するだけで、中小企業のセキュリティレベルは劇的に向上します。

この記事で分かること
・中小企業が最低限押さえるべきセキュリティ対策の「3本柱」
・パスワード管理ツール(1Password / Bitwarden)の選び方と導入ステップ
・VPN(NordVPN / ExpressVPN)がリモートワークに不可欠な理由
・エンドポイント保護(ESET / Microsoft Defender for Business)の費用対効果
・従業員5〜50名規模の企業における月額コストシミュレーション

セキュリティ対策「3本柱」── まずこの3つから始めるのがポイントです

中小企業のセキュリティ対策は、以下の3つのカテゴリを押さえることが基本です。

柱1:パスワード管理 ── 全社員のパスワードを安全に一元管理する 柱2:VPN ── 社外からのアクセスを暗号化して安全に接続する 柱3:エンドポイント保護 ── PCやスマホをウイルス・マルウェアから守る

この3つを押さえるだけで、中小企業を狙う攻撃の大部分を防ぐことができます。逆に言えば、このどれかが欠けていると、そこが攻撃者の侵入口になってしまいます。

重要:セキュリティ対策で最も危険なのは「何もしていない」ことではなく、「一部だけやって安心している」ことです。パスワード管理だけ導入してVPNを使っていなければ、カフェのフリーWi-Fiで通信が傍受されるリスクが残ります。3つをセットで導入することが大切です。

柱1:パスワード管理 ── 全員が「password123」を卒業する

なぜパスワード管理ツールが必要なのか

情報漏洩事件の原因として常に上位に入るのが「パスワードの使い回し」です。あるサービスから流出したパスワードを使って、別のサービスに不正ログインする「リスト型攻撃」は、最も一般的な攻撃手法のひとつです。

社員が個人的にパスワードを管理している状態では、使い回し、メモ帳への記録、ブラウザへの平文保存が日常的に発生します。パスワード管理ツールを導入すれば、社員は1つのマスターパスワードだけ覚えればよく、各サービスには自動生成された強力なパスワードが設定されます。

1Password(おすすめ)

1Passwordは、世界で15万社以上のビジネスに採用されているパスワード管理ツールです。

ビジネスプランの主な機能:

  • 社員ごとのパスワード保管庫(Vault)
  • チーム共有の保管庫(共有アカウントの管理に便利)
  • 管理者ダッシュボード(誰がどのサービスにアクセスしているか一覧)
  • SSOとの連携(Okta、Azure ADなど)
  • 退職者のアクセス権限を即座に無効化
  • Watchtowerによるパスワード強度・漏洩チェック
項目1Password BusinessBitwarden Teams
月額料金$7.99/ユーザー(約1,200円)$4/ユーザー(約600円)
無料プランなし(14日間トライアル)なし(7日間トライアル)
パスワード保管数無制限無制限
共有保管庫無制限コレクション機能あり
SSO連携対応エンタープライズプランで対応
管理者コンソール充実基本的な機能あり
日本語対応アプリ・ヘルプとも日本語対応アプリは日本語、ヘルプは英語中心
オープンソースいいえはい
1Passwordのデメリット(正直に書きます)
・無料プランがなく、最低でも月額約1,200円/ユーザーのコストが発生
・Bitwardenと比べると約2倍の費用
・オープンソースではないため、コードの監査はBitwardenに比べて限定的
・日本法人がなく、サポートは英語が基本(ヘルプは日本語あり)

1Password のビジネスプランを見る →

Bitwarden(コスト重視なら)

Bitwardenはオープンソースのパスワード管理ツールで、コストを抑えたい企業に最適です。1Passwordの約半額で利用でき、基本的な機能は十分に揃っています。セキュリティ監査の透明性を重視する企業にも支持されています。

  • コストを最優先に考えたい(月額約600円/ユーザー)
  • オープンソースの透明性を重視したい
  • セルフホスティングも検討したい
  • 基本的なパスワード管理・共有ができれば十分

柱2:VPN ── リモートワークの通信を「見えない」ようにする

なぜVPNが必要なのか

リモートワークが当たり前になった今、社員がカフェ、コワーキングスペース、自宅からアクセスする場面が増えています。フリーWi-Fiや家庭用ルーターの通信は暗号化されていないことが多く、通信の盗聴や中間者攻撃のリスクが常にあります。

VPN(Virtual Private Network)を使えば、すべての通信が暗号化されたトンネルを通るため、たとえ安全でないネットワークに接続していても、通信内容を傍受されることはありません。

NordVPN(おすすめ)

NordVPNは、世界で1,400万人以上が利用するVPNサービスです。ビジネス向けの「NordLayer」(旧NordVPN Teams)は、中小企業のリモートワーク環境に特化した機能を提供しています。

NordLayerの主な機能:

  • 専用サーバーによる高速接続(60か国以上)
  • ゼロトラストネットワークアクセス(ZTNA)
  • デバイス認証と多要素認証
  • 管理者による一元管理コンソール
  • 社内ネットワークへのセキュアなリモートアクセス
項目NordLayer(NordVPN ビジネス)ExpressVPN
月額料金$8/ユーザー〜(約1,200円)$12.95/月〜(約1,950円・個人向け)
法人向けプランあり(NordLayer)個人向けが中心
サーバー数6,000+(60か国以上)3,000+(105か国以上)
管理コンソールあり(ユーザー管理・ログ)なし
専用IP対応(オプション)対応(オプション)
ゼロトラスト対応非対応
同時接続数ユーザー数に応じて無制限8台
NordLayerのデメリット(正直に書きます)
・月額$8/ユーザー〜とVPNとしてはやや高め
・最低契約は年払いが基本で、月払いの場合は割高
・日本語サポートはあるが、対応時間が限定的
・専用サーバーやSAML SSO連携はAdvancedプラン以上が必要

NordVPN のビジネスプランを確認する →

VPNが不要なケースもあります
すべての業務がGoogle WorkspaceやMicrosoft 365などのクラウドサービスで完結しており、社内のオンプレミスサーバーへのアクセスが不要な場合は、VPNの優先度は下がります。ただし、フリーWi-Fiを使う機会がある場合は、通信の暗号化のためにVPNを導入しておくと安心です。

柱3:エンドポイント保護 ── PCとスマホを「最後の砦」で守る

なぜエンドポイント保護が必要なのか

パスワード管理とVPNで「入口」と「通信路」を守っても、PCやスマホ自体がマルウェアに感染してしまっては意味がありません。エンドポイント保護は、各デバイス上で動作するセキュリティソフトで、ウイルス、ランサムウェア、フィッシングなどの脅威をリアルタイムで検知・ブロックします。

「Windows Defenderがあるから大丈夫」と考える方もいるかもしれませんが、ビジネス利用では管理者がすべてのデバイスの保護状況を一元管理できることが非常に重要です。誰かのPCで定義ファイルが更新されていなかったり、保護機能がオフになっていたりする状態は、個人利用のDefenderでは検知できません。

ESET PROTECT(おすすめ)

ESETは、軽量な動作と高い検出率で定評のあるセキュリティソフトです。日本ではキヤノンITソリューションズが販売・サポートを担当しており、日本語での手厚いサポートが受けられます。

ESET PROTECT Entryの主な機能:

  • マルウェア・ランサムウェアのリアルタイム検知
  • フィッシングサイトのブロック
  • USBデバイスの制御
  • クラウド管理コンソール(全デバイスの状態を一覧)
  • Windows / macOS / Linux / Android / iOS対応
項目ESET PROTECT EntryMicrosoft Defender for Business
月額料金約330円/デバイス(年払い)$3/ユーザー(約450円)
管理コンソールクラウド管理(ESET PROTECT)Microsoft 365管理センター
対応OSWin / Mac / Linux / Android / iOSWin / Mac / Android / iOS
ランサムウェア対策多層防御(ESET LiveSense)攻撃面縮小ルール
EDR機能ESET PROTECT Advancedで対応標準搭載
日本語サポートキヤノンITSが対応(電話・メール)Microsoftサポート
Microsoft 365連携個別設定ネイティブ統合
ESETのデメリット(正直に書きます)
・EDR(高度な脅威検知)機能はAdvancedプラン以上が必要で追加コストがかかる
・Microsoft 365を全面的に使っている企業には、Defender for Businessのほうが親和性が高い
・UIがやや技術者向けで、非IT人材には設定がわかりにくい面がある
・ファイアウォール機能はWindows版のみ対応

ESET の法人向けプランを見る →

Microsoft Defender for Business(Microsoft 365ユーザーなら)

すでにMicrosoft 365 Business Premiumを利用している企業であれば、Defender for Businessが追加費用なしで利用可能です。別途セキュリティソフトを導入する必要がなく、Microsoft 365の管理センターからすべてのデバイスを一元管理できます。

  • Microsoft 365 Business Premiumをすでに契約している
  • Windows PCが業務端末の大半を占めている
  • EDR(高度な脅威検知)をコスト追加なしで導入したい
  • Intuneでのデバイス管理と統合したい

コストシミュレーション:従業員10名の場合

「3本柱すべてを導入するといくらかかるのか」──実際の金額を見てみましょう。

ツール月額/ユーザー10名の月額合計年額合計
1Password Business約1,200円約12,000円約144,000円
NordLayer Basic約1,200円約12,000円約144,000円
ESET PROTECT Entry約330円約3,300円約39,600円
合計約2,730円約27,300円約327,600円
年額約33万円で会社のセキュリティ基盤が整います
従業員10名で月額約27,000円、年額約33万円。情報漏洩事件が起きた場合の平均被害額が数千万円〜数億円であることを考えると、保険として非常に合理的な投資です。コストを抑えたい場合は、1PasswordをBitwardenに、ESETをMicrosoft Defender for Businessに置き換えることで、年額約20万円まで圧縮することも可能です。

導入の順序 ── 1日目にやること、1週間目にやること

一度にすべてを導入しようとすると社員の負担が大きくなります。以下の順序で段階的に導入するのがおすすめです。

1日目:パスワード管理ツールの導入

最も効果が高く、社員にとっての利便性も向上するパスワード管理ツールから始めるのがポイントです。

  1. 管理者がアカウントを作成し、全社員を招待する
  2. 社員はブラウザ拡張機能をインストールする
  3. 既存のパスワードをインポートする(ブラウザの保存済みパスワードから自動取り込み可能)
  4. 共有が必要なアカウント(SNS、共用サービスなど)を共有保管庫に移動する

1週間目:VPNの導入

パスワード管理に慣れたタイミングでVPNを導入します。

  1. 管理者がNordLayerのアカウントを設定する
  2. 社員はアプリをインストールし、招待リンクからログインする
  3. 「社外ネットワークに接続するときはVPNをオンにする」ルールを周知する
  4. 可能であれば、常時接続(Always-on VPN)の設定を有効にする

2週間目:エンドポイント保護の導入

最後にエンドポイント保護を導入し、3本柱を完成させます。

  1. 管理者がESET PROTECTまたはDefender for Businessのコンソールを設定する
  2. 各デバイスにエージェントをインストールする(リモートインストールも可能)
  3. スキャンスケジュールとアップデートポリシーを設定する
  4. 全デバイスの保護状況がコンソールで確認できることを検証する

よくある質問

そもそもWindows Defenderだけではダメですか?
個人利用であればWindows Defenderで十分なケースも多いです。ただし、ビジネスでは「全社員のデバイスの保護状況を一元管理する」ことが重要です。無料のWindows Defenderでは管理コンソールがなく、誰かのPCで保護が切れていても管理者は気づけません。Microsoft 365 Business Premiumを契約しているなら、Defender for Businessが管理機能付きで追加費用なしで使えるため、まずはそちらを検討されるのが良いでしょう。
パスワード管理ツールのマスターパスワードを忘れたらどうなりますか?
1Passwordの場合、管理者アカウントから社員のパスワードをリセットできます。ただし、マスターパスワード自体は1Password社にも保存されていないため、管理者が自分のマスターパスワードを忘れた場合はリカバリキットが必要です。導入時にリカバリキットを安全な場所に保管しておくことが大切です。
VPNを使うと通信速度が遅くなりませんか?
NordLayerなどの高品質なVPNサービスであれば、日常的なWeb閲覧やクラウドサービスの利用に影響が出ることはほぼありません。大容量ファイルの転送時に若干の速度低下を感じる場合はありますが、体感で気になるレベルにはならないことが多いです。接続先サーバーを日本国内に設定しておくと、速度低下を最小限に抑えられます。
社員数が5人以下でも導入する意味はありますか?
人数が少ない企業ほど、1人のアカウント漏洩が全体に与えるダメージが大きくなります。社員5人の会社で共有アカウントのパスワードが漏洩すれば、会社の全情報にアクセスされるリスクがあります。むしろ小規模な企業こそ、パスワード管理ツールだけでも導入する価値は十分にあります。
セキュリティツールの導入に社員が抵抗する場合、どうすればよいですか?
パスワード管理ツールについては「今までより楽になる」という点を強調するのが効果的です。毎回パスワードを手入力する手間がなくなり、「パスワードを忘れた」問題もなくなります。VPNについては「ボタン1つでオン」の手軽さを伝え、セキュリティソフトは「インストールしたら後は自動」であることを説明すると、抵抗感が薄れることが多いです。

編集部の結論

大切なのは「完璧なセキュリティ」を目指すことではなく、「最低限の3本柱」を今すぐ整えること。パスワード管理・VPN・エンドポイント保護の3つを揃えるだけで、中小企業を狙う攻撃の大部分を防ぐことができます。

まず最初に導入するなら1Password(またはBitwarden)がおすすめです。パスワードの使い回しを根絶するだけで、最も一般的な攻撃手法であるリスト型攻撃を無力化できます。しかも社員にとっても「便利になる」ツールなので、導入への抵抗が最も少ないのもポイントです。

リモートワークが常態化している企業はNordLayer(NordVPN ビジネス)で通信を暗号化し、すべてのデバイスにはESET PROTECT(またはMicrosoft Defender for Business)を導入して「最後の砦」を構築するのが理想です。

従業員10名で月額約27,000円。情報漏洩事件の被害額を考えれば、これは「コスト」ではなく「保険」です。まずはパスワード管理ツールから、今日始めてみてはいかがでしょうか。

まとめ:今日から始められる3ステップ

  • パスワード管理から始める → 1PasswordまたはBitwardenを導入し、全社員のパスワードを一元管理する
  • VPNで通信を守る → NordLayer(NordVPN ビジネス)でリモートワーク時の通信を暗号化する
  • エンドポイント保護で端末を守る → ESET PROTECTまたはMicrosoft Defender for Businessで全デバイスを保護し、管理コンソールで一元管理する

セキュリティ対策は「完璧を目指して何もしない」よりも、「最低限の3つを今日から始める」ほうがはるかに効果的です。どのツールも無料トライアルが用意されているので、まずはパスワード管理ツールから試してみることをおすすめします。